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なぜ今、第三者の視点がデジタル意思決定に必要なのか

       

代表理事 高萩遼介 × 顧問/アドバイザリー 鈴木章太郎 対談

はじめに

DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI活用が企業経営や行政運営の中核課題となる中、
「何を選び、どう判断するか」という意思決定の質がこれまで以上に問われている。
しかし、その判断プロセスは十分に検証されているだろうか。

本対談では、JDACs代表理事の高萩遼介と、
外資系IT企業での技術標準化活動を経て政府CIO補佐官、デジタル庁PMを歴任、現在は独立行政法人のデジタル統括アドバイザーを務める顧問の鈴木章太郎が、第三者アドバイザリーの必要性とその社会的意義について語り合った。

デジタル意思決定の現場で起きていること

高萩

私はこれまで、デジタルマーケティングやDX支援の現場で、戦略立案から実行・検証まで多くのプロジェクトに携わってきました。
その中で痛感してきたのは、意思決定のプロセスが「ブラックボックス化」しやすいという問題です。

ベンダーから提案を受け、社内で検討し、導入を決める。
この流れ自体は自然なものですが、その判断が本当に自社にとって最適だったのか、後から検証されることは稀です。
そして、うまくいかなかった場合も「やってみなければわからなかった」という結論で終わってしまう。

鈴木

おっしゃる通りですね。
私は内閣官房や法務省、デジタル庁、金融庁などで、行政のデジタル化における技術アドバイザリーやプロジェクトマネジメントに関わってきましたが官民問わず同様の構造的な課題を感じてきました。

特に技術領域では、専門性の非対称性が大きい。
提案する側と判断する側の間に、知識やリテラシーの差があると、判断の妥当性を問うこと自体が難しくなります。

結果として、「声の大きい人」や「有名なベンダー」の意見が通りやすくなる。
これは健全な状態とは言えません。

なぜ「第三者」が必要なのか

高萩

JDACsを設立した背景には、まさにその問題意識があります。
私たちが目指しているのは、特定のベンダーや利害関係者から独立した立場で、意思決定を「評価」し「助言」する機能を社会に実装することです。

誤解のないように申し上げると、ベンダーやコンサルティング会社が悪いわけではありません。
それぞれの専門性を活かして価値を提供されています。

ただ、提案者と評価者が同一である構造には、どうしても限界がある。
だからこそ、第三者の視点が必要だと考えています。

鈴木

私が長年、技術標準化や相互運用性の領域に携わってきたのも、根底には同じ思想があります。
技術は本来、特定の企業の利益のためではなく、社会全体の基盤として機能すべきものです。

複数の外資系IT企業にいた時代も、自社製品を訴求することだけが目的ではなく、中立性や客観性が求められる業界全体の健全な発展のために何が必要かを考えてきました。
それが現在のような技術アドバイザリーの仕事につながっています。

JDACsの活動に共感するのは、その「中立性」と「検証性」という理念が、私自身のキャリアを通じて大切にしてきた価値観と一致するからです。

「証拠と倫理」に基づく判断とは

高萩

JDACsのミッションは「証拠と倫理に基づくデジタル意思決定を、社会の当たり前にすること」です。
この言葉には、二つの要素が込められています。

一つは「証拠」、つまりエビデンスです。
感覚や経験だけでなく、データや事実に基づいて判断すること。

もう一つは「倫理」です。
技術的に可能であることと、社会的に望ましいことは必ずしも一致しません。


AIの活用一つとっても、プライバシーや公平性、説明責任など、考慮すべき論点は多岐にわたります。

鈴木

その両輪が大切ですね。
私は大学で15年以上、技術と制度、そして教育を横断する形で人材育成にも関わってきましたが、技術を学ぶだけでは不十分だと常々感じています。

技術者には社会的な視点が、経営者や行政官には技術的なリテラシーが、それぞれ求められます。
その橋渡しをする存在として、JDACsのような第三者機関が果たせる役割は大きいと思います。

企業・行政・教育機関に向けて

高萩

JDACsが対象としているのは、企業だけではありません。
自治体や教育機関も、デジタル戦略やAI活用において同様の課題を抱えています。

特に地方自治体では、専門人材の確保が難しく、ベンダー依存になりやすい構造があります。
教育機関においても、EdTechの導入やデータ活用において、何を基準に判断すればよいのか悩まれているケースは少なくありません。

鈴木

行政の立場から言えば、デジタル化の推進には「説明責任」が伴います。
なぜその技術を選んだのか、なぜその予算が必要なのか、住民や議会に対して説明できなければなりません。

その際に、第三者による評価やレビューが可能なことは、判断の正当性を担保する上で非常に有効です。
これは行政だけでなく、株主や取締役会に対する説明責任を持つ企業経営者にとっても同様でしょう。

これからの社会に向けて

高萩

私たちは、JDACsの活動を通じて、デジタル意思決定における「健全な判断の文化」を育てていきたいと考えています。

それは、特定の正解を押し付けることではありません。
判断に必要な情報を整理し、リスクと機会を明らかにし、最終的な意思決定を支えること。

その姿勢を「社会的誠実性」という言葉で表現しています。

鈴木

デジタル技術は、社会のあらゆる領域に浸透しています。
だからこそ、その判断の質が社会全体の未来を左右すると言っても過言ではありません。

JDACsのような存在が、企業や行政、そして市民社会にとっての「信頼できる相談先」となること。
それが、より良いデジタル社会の実現につながると信じています。

高萩

本日はありがとうございました。

鈴木さんの長年のご経験に基づくお話は、私自身も多くの学びをいただきました。
JDACsとして、これからも中立性と検証性を大切にしながら、社会に貢献していきたいと思います。

鈴木

こちらこそ、ありがとうございました。
引き続き、良い議論を重ねていきましょう。