代表理事 高萩遼介 × アンバサダー 優木まおみ 対談
■はじめに
デジタル技術やAIは、もはや企業や行政だけの話ではない。
私たちの日常生活、子育て、教育、働き方のあらゆる場面に浸透している。
そうした中で、生活者は何を基準に選び、どう判断すればよいのか。
JDACs代表理事の高萩遼介と、アンバサダーを務める優木まおみが、「暮らしの中のデジタル意思決定」について対話した。
■デジタルと暮らしの距離
高萩
優木さんは2023年からマレーシアに移住され、日本と海外の二拠点で生活されていますね。
デジタル技術は、その生活の中でどのような存在ですか。
優木
なくてはならないものですね。
仕事の打ち合わせはオンラインが中心ですし、子どもたちの教育でもデジタルツールは日常的に使っています。
日本にいる家族や友人とのコミュニケーションも、テクノロジーがあるからこそ成り立っている部分が大きいです。
ただ、便利になった一方で、「これで本当にいいのかな」と迷う場面も増えました。
高萩
具体的には、どのような場面でしょうか。
優木
たとえば、子どもにタブレットをどこまで使わせるか。
教育アプリを選ぶとき、何を基準にすればいいのか。SNSとの付き合い方をどう教えるか。
正解がないからこそ、親として悩むことが多いんです。
■専門家の知見と生活者の感覚
高萩
JDACsは主に企業や行政、教育機関を対象として活動していますが、優木さんにアンバサダーをお願いした理由は、まさにそこにあります。
専門家の議論は、どうしても専門用語や抽象的な概念が多くなりがちです。
でも、デジタル技術の影響を最も身近に受けているのは、日々の暮らしを営む生活者の方々です。
その視点を大切にしなければ、本当の意味での社会的な意義は生まれないと考えています。
優木
ありがとうございます。私自身、専門家ではありませんが、だからこそ感じることがあります。
デジタルやAIの話題って、すごく難しく聞こえることが多いんですよね。
「DX」とか「AI活用」とか、言葉は聞くけれど、自分の生活とどうつながるのかがわかりにくい。
でも実際には、スマートフォンのアプリ一つとっても、私たちは日常的にデジタルの恩恵を受けていて、同時にリスクにもさらされている。
高萩
おっしゃる通りです。そして、そのリスクは目に見えにくいことが多い。
個人情報がどう扱われているのか、アルゴリズムがどんな基準でおすすめを表示しているのか、普通に使っているだけでは気づきにくい部分がたくさんあります。

■子育てと教育の現場から
優木
子育てをしていると、教育とテクノロジーの関係は本当に身近なテーマです。
たとえば、学校でタブレットが配られて、デジタル教材が導入される。それ自体は良いことだと思うんです。
でも、「なぜこの教材が選ばれたのか」「子どもたちのデータはどう管理されているのか」といったことは、保護者にはほとんど説明されません。
高萩
教育機関のデジタル化は、JDACsとしても重要なテーマの一つです。EdTech(教育テクノロジー)の市場は急速に拡大していますが、その選定や導入のプロセスが十分に検証されているかというと、課題が多いのが現状です。
学校側も専門人材が限られている中で判断を迫られ、結果としてベンダーの提案をそのまま受け入れるケースも少なくありません。
優木
親としては、子どもに良い教育を受けさせたいという思いがある一方で、「本当にこれでいいのかな」という不安もあります。
誰かに相談したくても、どこに聞けばいいのかわからない。
高萩
その「相談先がない」という状況こそ、私たちが問題意識を持っている点です。
企業であれば外部のコンサルタントに依頼することもできますが、一般の生活者や、予算の限られた教育機関にとっては、中立的な立場から助言を得る機会が非常に限られています。
■「橋渡し役」としての役割
優木
JDACsのアンバサダーとして、私に何ができるだろうと考えたとき、やはり「橋渡し役」なのかなと思いました。
専門家の方々が持っている知見を、私のような立場の人間が「生活者の言葉」に翻訳して伝える。逆に、生活者が感じている不安や疑問を、専門家の方々に届ける。その双方向のコミュニケーションが大切だと思うんです。
高萩
まさにそれが、優木さんにお願いしたかったことです。
JDACsの理念である「中立性」「検証性」「社会的誠実性」は、言葉としては少し堅く聞こえるかもしれません。でも、その根底にあるのは、「正直で信頼できる情報をもとに、一人ひとりが納得して判断できる社会を作りたい」というシンプルな願いです。
優木
それは、私が大切にしている価値観とも重なります。
情報があふれる時代だからこそ、「何を信じればいいのか」がわかりにくくなっている。特に子どもたちの未来に関わることは、慎重に、でも前向きに考えていきたいですよね。
■これからの社会に向けて
高萩
デジタル技術は、これからも進化し続けます。
AIの発展によって、私たちの生活や働き方は大きく変わっていくでしょう。
その変化を恐れるのではなく、上手に付き合っていくために必要なのは、正しい情報と、信頼できる判断の軸だと思います。JDACsは、その軸を社会に提供していきたいと考えています。
優木
私も、一人の母親として、一人の生活者として、この活動に関わらせていただけることをうれしく思っています。
難しいことを難しいまま伝えるのではなく、「なるほど、そういうことか」と思ってもらえるような発信を心がけていきたいです。
高萩
ぜひ、一緒に取り組んでいきましょう。
専門家だけで閉じた議論ではなく、生活者の方々と対話しながら、より良い社会を作っていく。それがJDACsの目指す姿です。
優木
こちらこそ、よろしくお願いします。
